超伝導研究の最先端:
多自由度、非平衡、電子相関、トポロジー、人工制御
2017年6月19日~6月21日  京都大学基礎物理学研究所

超伝導研究の最先端:
多自由度、非平衡、電子相関、トポロジー、人工制御
2017年6月19日~6月21日  京都大学基礎物理学研究所

超伝導研究の最先端:
多自由度、非平衡、電子相関、トポロジー、人工制御
2017年6月19日~6月21日  京都大学基礎物理学研究所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基研研究会
「超伝導研究の最先端:多自由度、非平衡、電子相関、トポロジー、人工制御」

研究会の趣旨

近年の計算機環境の充実に伴い、超伝導の理論研究は、少数の電子軌道のみを考慮すればよい比較的簡単な構造をもつ超伝導体の研究から、それまでは解析が難しかった多数の電子軌道が関与するより複雑な構造をもつ超伝導体の研究へ重点をシフトしつつある。とりわけ、2008 年に新世代の高温超伝導体である鉄系超伝導体が発見されて以来、軌道自由度の多様性が超伝導発現機構に重要な影響を与えうることが明白となり、電子相関の下、スピンの自由度と軌道の自由度がどのように競合あるいは協力しあうかを解明することが超伝導研究の重要な課題となってきている。また、鉄系、銅系高温超伝導の最新の話題のほか、非平衡状態での超伝導や、高圧での高温超伝導、電界誘起超伝導などの新しい現象も報告されており、それらに対して理論が研究を牽引する役割を担ってきている。

また、多自由度をもつ強相関電子系の性質を明らかにすることは、重い電子系超伝導体やフラーレン、ルテニウム酸化物等の古くから存在は知られているが、未だその超伝導発現機構が明らかでない物質の研究を進める上でも重要である。UPt3 やSr2RuO4 などのスピン1 のクーパー対をもつスピン三重項超伝導体の候補物質は、いずれも複数の軌道自由度をもつ。これらの物質は、NMRのデータがスピン三重項超伝導状態を示唆する一方、臨界磁場の実験結果はスピン三重項超伝導状態では簡単には理解できない結果となっている。この矛盾の解消に向けた、軌道自由度、スピン軌道相互作用、電子相関のすべてをきちんと取り入れた理論研究も始まろうとしており、今後大きな発展が期待できる段階にある。

さらに、最近、波動関数のトポロジーで特徴づけられる物質群「トポロジカル絶縁体・超伝導体」の発見より、超伝導現象に新たな側面が加わることになった。これらの物質群では、マヨラナ型励起に代表されるエキゾチック準粒子など、従来の超伝導理論の枠組みでは捉えられなかった新しい超伝導の性質が明らかになりつつある。トポロジカル超伝導体の候補物質の多くも、スピンおよび軌道の自由度に特徴的な構造をもつ多自由度超伝導体である。これらの物質群における、トポロジー、スピンおよび軌道自由度、電子相関の関係を明らかにすることは、物性物理学だけでなく、トポロジカル相というより広い分野にわたって適用可能な新しい相構造を実験的に検証していく上でも重要である。

そして、2007 年にチタン酸化物界面において人工的2 次元超伝導が発見されたこと、そして2008 年に電界による超伝導相の制御に成功したことを契機として、人工的に制御された超伝導体の研究が著しく進んでいる。現在では様々な酸化物界面に加えて遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる一連の物質群やを含む原子層物質において2次元超伝導が発見されており、そこでは軌道自由度の人工制御やパリティが欠如した超伝導の制御に成功している。また、現在では同様のテクニックによる銅系超伝導、鉄系超伝導、重い電子系超伝導の制御も行われており、鉄系超伝導体では転移温度が一桁上昇するという驚くべき発見もなされた。このような人工的に制御された系においては理論研究による実験のデザインが可能であり、それが研究の進展を牽引してきた。トポロジカル超伝導に伴うマヨラナ準粒子の観測が報告されたのもその典型例である。

このような状況を踏まえ、それぞれの分野で世界最先端の研究成果を挙げている第一線の研究者を集め、最新の成果について討論するとともに、実験研究者の講演も織り交ぜて今後の超伝導研究の方向性について議論するための研究会を開催する。招待講演者による口頭発表に加えて、一般申し込み者による口頭発表と、一般申し込み者によるポスター発表を行う。

日程・開催場所

招待講演者

世話人

柳瀬陽一(京大理、代表)、佐藤 昌利(京大基研)、池田浩章(立命館大理工)、大野義章(新潟大理)、
有田亮太郎(理研)、黒木和彦(阪大理)、紺谷浩(名大理)、遠山貴己(東京理科大理)、松田祐司(京大理)