過去のセミナー

日時
7月2日 (水)
場所
京都大学理学部 5号館 413
講演者
多田 靖啓 氏
(凝縮系理論グループ D1)
タイトル
空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi$_3$、CeIrSi$_3$における上部臨界磁場の解析

備考欄 (アブストラクト等)

近年行われた、空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi$_3$、CeIrSi$ _3$における 上部臨界磁場$H_{c2}$の測定において、次のような特徴がみられ注目を集めている。(1)$ab$面内と $c$軸方向磁場の場合の$H_{c2}$の大きな異方性。(2)$T_c\sim 1$Kに対して30Tをこえる非常に大きい $H_{c2}^{//c}(0)$。(3) $H_{c2}^{//c}(T)$の強い圧力依存性とその下凸性。本研究では、(2)と(3)に 注目し、$c$軸方向磁場の場合を理論的に解析する。実験との比較のためにミクロなバンド構造を用い、 量子臨界点近傍の強い反強磁性揺らぎを現象論的に取り入れる。Eliashberg方程式を解いて得られた 結果は以下の通りである。(1)$H_{c2} $は軌道対破壊効果によって決められる。(2)量子臨界点に 近づくほど$H_{c2}$は大きくなり、$H_{c2}(0)> 30$Tに達する。(3)このとき同時に、$H_{c2}(T)$ 曲線は大きな下凸の曲率をもつようになる。(1)は空間反転対称性の欠如によって、 (2)(3)は 量子臨界点近傍の反強磁性揺らぎの低温における増大によって引き起こされる。セミナーでは、 この$H_{c2}$にみられる特徴的圧力依存性について議論する。