過去のセミナー
- 日時
- 7月16日 (水)
- 場所
- 京都大学理学部 5号館 413
- 講演者
- 小布施 秀明 氏
- (凝縮系理論グループ)
- タイトル
- 金属−量子スピンホール絶縁体転移の臨界的性質
- 備考欄 (アブストラクト等)
近年、系の内部は絶縁体であるがedge statesとしてスピン流を運ぶ量子スピンホール絶縁体が
注目されている。このようなedge statesが存在する絶縁体は、バンド理論では説明できず系の
トポロジカルな性質が重要となるため、トポロジカル絶縁体と呼ばれる。この量子スピンホール絶縁体
は、時間反転対称性はあるがスピン回転対称性が破れた系である。そのため、不純物を含む系における
金属−量子スピンホール絶縁体転移は、対称性のみを考慮するならば、シンプレクティック・クラスに
属すると期待される。しかし最近、2次元系における金属−量子スピンホール絶縁体転移は、系の
トポロジカルな性質を反映し、異なるユニバーサリテ・クラス(トポロジカル項を有するシンプレク
ティック・クラス)に属する可能性が指摘された。
そこで本研究では、2次元系の量子スピンホール効果を記述する新しいモデルを提案し、金属−量子
スピンホール絶縁体転移のユニバーサリティ・クラスを数値的に調べた。その結果、金属−量子スピン
ホール絶縁体転移は通常のシンプレクティック・クラスに属することが明らかとなった。セミナー
では、この結果とランダム・スカラー・ポテンシャル中の単一Diracフェルミオンがトポロジカル項
を有するシンプレクティック・クラスに属することを示した解析計算との関係について議論する。
また、金属−量子スピンホール絶縁体転移における境界マルチフラクタル性に関する最近の研究結果も
紹介する。
H. Obuse, A. Furusaki, S. Ryu, and C. Mudry, Phys. Rev. B 76, 075301 (2007); arXiv:0805.4043.