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日時
6月18日 (水)
場所
京都大学理学部 5号館 413
講演者
中井 祐介 氏
(京都大学大学院 理学研究科 固体量子物性グループ)
タイトル
NMR/NQRからみた高温超伝導体LaFeAs(O1-xFx)

備考欄 (アブストラクト等)

今年2008年、東工大の神原らによる鉄を含む層状超伝導体LaFeAs(O1-xFx) (Tc~26 K,x=0.11)の 発見[1]を契機として、RFeAsO系(R:希土類)が、銅酸化物高温超伝導体を除いて最も高い超伝導転移 温度(Tc)をもつ物質群であることが明らかとなった[2]。この系ではFe原子が二次元正方格子をなす 層状の結晶構造を持ち、バンド計算等からほぼFeの3d電子からなる円筒状のフェルミ面をもつことが 報告され、二次元性の強いFeの3d電子と高いTcとの関係に興味が持たれている。我々は、特にフッ素 ドープ(電子ドープに相当)によってこの系の磁気励起がどう移り変わるのか、磁気励起と超伝導が どのように関係するのかに興味をもって、 NMR/NQRを用い研究を進めている。これまでの As、La-NMRの結果から、母物質 LaFeAsOが構造層転移(~160K) を起こしたあと反強磁性転移(~140K)を 起こすこと、常伝導状態の磁気励起がフッ素ドープ量により大きく変化しx=0.11において擬ギャップ的 振る舞いがみられること、超伝導ギャップにラインノードをもつ異方的超伝導体であることなどを 報告してきた[3]。
講演では、これまでの鉄系超伝導体の簡単なレビューとともに、我々の最近の結果を含めたNMR/NQRの 実験結果について紹介する予定である。
[1] Y. Kamihara et al., J. Am. Chem. Soc. 130 (2008) 3296.
[2] 例えば、X. H. Chen et al., Nature 453 (2008) 761.
[3] Y. Nakai, K. Ishida et al., arXiv:0804.4765. To appear in JPSJ vol 77. No.7.